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【フル有給攻略】有給休暇取得日の賃金計算 法定3パターンと就業規則での定め方 管理職・人事担当者向け解説

Tags: 有給休暇, 賃金計算, 労働基準法, 管理職, 人事労務

【フル有給攻略】有給休暇取得日の賃金計算 法定3パターンと就業規則での定め方 管理職・人事担当者向け解説

企業の管理職や人事労務担当者の皆様にとって、年次有給休暇(以下、有給休暇)の適切な管理は重要な業務の一つです。特に、有給休暇を取得した日の賃金をどのように計算し支払うかは、従業員の待遇に関わるため、正確な理解と実務対応が求められます。

労働基準法では、有給休暇を取得した日の賃金について、複数の計算方法を認めています。どの方法を選択し、どのように運用するかは、就業規則に明確に定める必要があります。本稿では、管理職・人事労務担当者の皆様が、有給休暇取得日の賃金計算に関する法的要件と実務を正確に理解し、適切に運用できるよう、詳細に解説いたします。

有給休暇取得日の賃金に関する労働基準法の定め

労働基準法第39条第7項において、有給休暇を取得した日の賃金については、以下のいずれかの方法で支払うことが定められています。

  1. 平均賃金
  2. 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
  3. 健康保険法第99条に定める標準報酬日額(ただし、この方法を採用する場合は、労使協定の締結が必要です。)

企業は、これら3つの方法のうち、いずれか一つを就業規則に定めておく必要があります。異なる計算方法を混在させることや、事後的に計算方法を変更することは原則として認められません。

法定3パターンの計算方法と実務

ここでは、それぞれの計算方法について、具体的な内容と実務上のポイントを解説します。

1. 平均賃金

平均賃金は、原則として、事由発生日(この場合は有給休暇を取得した日)の以前3ヶ月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(暦日数)で割った1日あたりの賃金額です。

計算方法:

計算上の注意点:

実務上のポイント:

2. 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金

この方法は、労働者がその日に通常の所定労働時間勤務した場合に支払われるはずであった賃金額を支払うものです。最も多くの企業で採用されている方法です。

計算方法:

実務上のポイント:

3. 健康保険法第99条に定める標準報酬日額

この方法は、健康保険の傷病手当金等の算定基準となる標準報酬月額を30で割った額を日額とします。この方法を採用するには、労使協定の締結が必要不可欠です。

計算方法:

実務上のポイント:

就業規則での正しい定め方

有給休暇取得日の賃金計算方法を就業規則に定める際は、以下の点を明確に記載する必要があります。

記載例(所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を採用する場合):

(年次有給休暇の賃金) 第〇条 年次有給休暇を取得した場合に支払う賃金は、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金とする。 2 前項の「通常の賃金」とは、基本給及び〇〇手当、△△手当とする。

就業規則は労働者への周知義務があります。適切に定め、周知しておくことで、賃金計算に関する労使間のトラブルを未然に防ぐことができます。

管理職・人事担当者が押さえるべき実務ポイント

まとめ

有給休暇取得日の賃金計算は、労働基準法によって3つの方法が認められています。企業は就業規則にその計算方法を明確に定め、それに従って賃金を支払う義務があります。特に、多くの企業で採用されている「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」は、計算方法と含まれる手当の範囲を明確にすることが重要です。

管理職・人事労務担当者の皆様は、自社の就業規則を正確に理解し、定められた計算方法に基づいた正確な賃金計算の実務を徹底してください。これにより、従業員からの信頼を得るとともに、賃金に関する労使間のトラブルを回避し、有給休暇の適切な取得促進に繋げることができます。

「フル有給攻略ガイド」では、今後も有給休暇に関する実践的な情報を提供してまいります。貴社の有給休暇管理の一助となれば幸いです。